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2012年6月26日 (火)

『送り火』 重松清

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amazon 紹介文より
「昔の親は、家族の幸せを思うとき、何故か自分自身は勘定に入ってなかったんだよねえ…」。女手ひとつで娘を育てた母は言う。そんな母の苦労を知りつつ反発する娘が、かつて家族で行った遊園地で若かりし日の両親に出会う。大切なひとを思い、懸命に生きる人びとのありふれた風景。「親子」「夫婦」のせつない日常を描いた傑作短篇集。

一作目の『フジミ荘奇譚』はホラー(?)モノ。ネコが出てくる。次女に読ませたい作品(実際に読ませた)。作品に出てくる老婆の「猫っていいよ、猫は。ほんとうにね」という台詞がイイ。うちのネコを見ててつくづくネコっていいと思う。

一番よかったのは『よーそろ』。よーそろとは「異常なし、このまままっすぐ進め」という船乗りの言葉。初めて知った。この言葉はボクの好きな長渕剛の歌の歌詞に出てくる言葉だったのだが、今更ながら歌の意味が解った。
そして、この作品に出てくる関西弁のムラさんの日記(ホームページ)は人の心に訴えるものがある。アフリカを放浪する中での思いを書いた日記には、心を打たれる。 
しかし、ムラさんには秘密がある。(ここは本書読んで)とてもつらい過去だ。そういうつらい過去をもつムラさんだからこそ、人の心に訴える日記が書けるんだと思った。

みなさんにもぜひ読んでほしい、一文なので、そしてボク自身の備忘録として抜粋しておく。 

ほんま、アフリカがのんきな世界やなんて、誰が言うたんや。油断も隙もあったもんやないで。
でもな、そのセコさやヤバさ、ムラさんは「あり」やと思う。
アフリカの黒人は物質文明に毒されてへんから素朴で純情……そんなん勝手に決めなや。みんながみんな『ブッシュマン』のニカウさんみたいなひとやったら、なんでアフリカでこんなに戦争やら内乱やら起きんねん。せやろ?なんで難民キャンプに飢えた子どもがあふれ返っとんねん。せやろ?
アフリカのひとも、みんなわしらと同じや。同じように欲を持って、野心を持って、守るべきものを持って、負けてられへん意地があって、相手をだましたり傷つけたり、逆にだまされたり傷つけられたりしよる。嘘のうまい者もおるし、下手くそもおる。喧嘩の強い者もおるし、弱い者もおる。セコいことして世の中渡る者もおるし、正直すぎてドッボにはまった者もおる。美人もおるし、ブスもおる(あ、これ、あんまり関係ないな)。
それでええやん。
なあ、狭~いニッポンの諸君、あんたら、自分が出会うた相手はみんな「いい奴」やないとあかん、思うとるんと違う?
言うたら、友だちをどんどん増やさなあかん、いう思想やな。思想て大げさやけど。
甘いなあ、それ。
そんなん考えとったら、キッいやろ。
「嫌な奴」に出くわしたら、どないすんねん。自分の不幸を嘆くんか?「嫌な奴」を憎むんか?どっちにしたってキツいわな。
世の中には「いい奴」もおるし、「嫌な奴」もおる。それが現実や。自分は「いい奴」としか出会いとうない? アホか、ずうずうしいにもほどがあるわ。
逆に言うたら、「嫌な奴」に出くわしても、そんなに落ち込むなや。なあ。丁半博打と同じや。
たまたま裏目の奴と会うただけのことやないけ。
なんか今日は説教モードに入ってもうた。
市内でぶらぶらしとると、気力や体力が余ってしまうんかなぁ。
明日はナイロビを出よう思うてます。
あ、そうや、ケニアではバスのことを「ニッサン」言うんや。昔のアメリカで、小型車が「ホンダ」になっとったんと同じやな。トヨタなにしとんねん。がんばりやー。
ナイロビからタンザニアに入る予定です。タンザニアはケニア以上にヤバいらしいんで、いまから楽しみです。
どないな連中に会うんやろ?
ムラさん、べつに「嫌な奴」に好きこのんで出会いたいわけと違う。でも、「いい奴」としか出会いとうないと思うほどの甘ちゃんでもない。わし、「いろんな奴」と出会いたいから、放浪をつづけとるんや。(P184~)


今日はマジなこと書く。
難民キャンプいうてな、日本におったら、軽いねん、響き。「キャンプ」があかんのかな。「避難所」でええのにな。キャンプ、軽いわ、言葉が。オートキャンプと似たようなもんか、いうて。
でもな、本場モン見たら、冗談言えへんよ。言うたらあかんし、言う気も起きん。
ベナコのルワンダ難民キャンプに釆とんねん、いま。難民の数、30万人やて。日本でいうたら、どこの市やろ。そこそこの都市や。日本人のボランティアも、ようけいてはる。みんな、必死に、難民を救おう思うて働いてはる。
でも、めちゃくちゃや。救援物資の薬やら食いものやら、タンザニア人の外道どもが市場に流し放題や。昨日は、日本から来たカメラマンが、タンザニア兵を怒らせて、フィルム全部抜き取られて泣いとった。
グルメの国ニッポンの諸君、「痩せて骨と皮だけになった」いう言葉、これからは軽々しくつかわんといてな。そういうひとを(子どもがほとんどや)じかに見るとな、言葉にしたら嘘になるなあ、て思う。テレビの映像でも伝わらんよ。赤土の埃っぽさや、陽射しの強さや、饐えたよなにおいの中での「骨と皮」なんや。一日に何人も死んでいって、子どもがその死体をぼんやり見とる毎日の中での「骨と皮」なんや。
わかるか?
わかる-とか言うなよ。
わからんでええ。
わかったふり、せんでええ。
「骨と皮」をリアルに想像することのできん、いまの幸せを噛みしめようや。
ルワンダの子どもらに同情せんでもええ。
ニッポンの豊かさに負い目を感じんでもええ。
ただ、がんばろうや、わしら。
がんばって、いこうや。
わしらには「肉」がある。
「肉」は弾力があんねん。クッションになんねん。
「骨と皮」の子どもは、すぐ怪我をする。クッションがないさかい、ちょっと転んでも出血するし、軽くぶつかっただけで骨折する。
でもな、そんな子どもらも、キャンプの中で友だち同士で遊んどんねん。笑うんや。なんでやろうな・・・・絶望しかないような状況なのに、やっぱり、おもしろいことがあったら笑うねんな、人間。
体は「骨と皮」だけでも、心には「肉」が付いとるんかもしれん。わしらの心の「肉」より、もっと柔軟で、もっとたくましい「肉」なんやろな。
心に「肉」が付いとるか? あんたら。
ええ「肉」付けような、お互い。
わし、これから海に出よう思うとる。ヒッチハイクやさかい何日かかるかわからんけど、海が見とうなった。(P188~)


海や~っ! 海、海、海、海、空、空、空、空、ときどき雲や~っ!
いま、エジプトにいてます。地中海に面したアレキサンドリアいう街です。都会です。海にヨットがぎょうさん浮かんでます。みんな金持ちなんやろな~。
海はええなあ。でっかいやんか、なにせ。
アフリカの大地に寝っころがって大空を見て、体を起こして海を見つめてる。
ちっぽけなもんですわ、人間。でも、ちっぽけはちっぽけなりに、いろいろ苦労してんねん、人間(あんたかて、そうやろ?)。
ずうっと昔の人間は、水平線の向こうは崖になっとるて信じとったらしいな。アホやな、やっぱり昔の奴らは。水平線が「終わり」やて……でもまあ、その気持ちもわからんでもない。「ここから、ここまで」の範囲がないと、人間、自分の世界の輪郭がつかめへん思うんや。つかめへんと、ごっつ不安になる思うんや。でもな、家庭でも学校でも会社でも、あんたら一人一人のいてる世界を「ここから、ここまで」でくくってしもうたら、「ここまで」の先は「終わり」になる。
それでええんか? いま目に見えとる世界の先は「終わり」で、ほんまにええんか?
昔の船乗りの気持ちになってみようや。「終わり」に向かって最初に船を漕ぎだしたひとの勇気を想像してみようや。ちょっと考えればわかることやけど、どんなに沖に出ても絶対に船が水平線に着くことはない。1キロ進めば、水平線も1キロぶん遠ざかる。2キロ進んでも、20キロ進んでも、200キロ進んでも……で、いつまでたっても着けへん水平線を目指して進んでいく
うちに、向こうに陸地が見えてくんねんな。世界の「終わり」やったはずの水平線が、いつのまにやら、新しい世界の「始まり」になっとんねん。
おもしろい思わへん?
思うやろ?
あんたが自分の世界の「ここまで」と思うとるものは、ほんまは新しい世界の「ここから」なんや。そない考えたら、広いでぇ、世界、ほんまに。
せやから、わしも、まだ旅をつづける。アフリカの旅の「終わり」は、ヨーロッパの放浪の「始まり」や。アレキサンドリアでしばらく働いてお金稼いで、ヨーロッパに向かう船に乗ろう
思うとる。
「異状なし、このまままっすぐ進め」いうんを、船乗りの言葉では、こない言うねん。
よーそろ!
よーそろ!
わしも、よーそろ!
あんたも、よーそろ!
あんたの目の前の水平線は「終わり」のしるしと違うでえ!(P208~)

本日の早朝ラン12.5㎞。
木曜日の記録会に向けて最後の刺激入れをする。WS5本の後、1㎞を3'20で。思ったより早いペースで走れている。残酷マラソン明けの疲れは脱したようだ。
さて、木曜日の尼崎ベイコム競技場ではどうなるか!?あとは気象条件を願うのみ・・・。

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